Chairmans EYE -第五節展望-

2025年08月03日

CHAIRMANS EYEとは

30リーグチェアマンの上田ダイゴが

各団体の紹介や試合の見どころを

独断と偏見と妄想で紹介するコーナーです

今回は第五節

『夜に静か×AND FAMILIARS』 

独自の目線で徹底解説します

いよいよ佳境を迎えた30リーグ2025。火リーグの最終戦となる第五節『夜に静か×AND FAMILIARS』は、本来であればリーグ優勝の行方を決定する大一番となる所だが、同リーグの『ルイボスティーはバニラの味(以下ルイバニ)』が連勝で早々にリーグ優勝を決めており、今試合はいわゆる消化試合となってしまった。

しかし、だからと言って試合としての価値が下がる訳ではまったくないと私は言いたい。この戦いで負けた方は全敗で30リーグを終える事になってしまうのだから、団体のプライド的にはむしろ優勝決定戦よりも『絶対に負けられない戦い』と言えるのではないだろうか。

ではその団体のプライドを賭けた絶対に負けられない戦いに挑む両団体の状況を見てみよう。


CHAIRMANS PREDICT

まずは先攻『夜に静か』。初戦の第一節では主宰である容原静による一人芝居『終演挨拶』を上演。去年に容原主宰の別名義ユニット『カムパネルラ』で参加した30リーグ2024でも容原は一人芝居を上演して敗退しているので、ユニット名こそ違うもののリベンジマッチ的な意味合いがあったのかもしれない。去年の作品同様、凄まじい熱量散文詩の様な台詞を観客に浴びせ続けるポエトリーリーディングのスタイルを継承しつつ、意味深なリフレインや多彩な演出効果で演劇的な魅せ方にも工夫を凝らした野心的な作品であったが、今回も結果に結び付かず大差で敗退

Chairmans eyeでは勝敗を分けた要因をなるべく作品内容以外で考える事にしているので、その観点から考察するに、夜に静かの敗因として考えられるのは、なんといってもマンパワー不足。つまり団体関係者の少なさであろう。

このコラムでも何度も語っている通り、観客投票型の対戦イベントの場合、集客力が勝敗を大きく左右する。自分たちを支持する観客が多ければ多いほど勝つ確率が高くなるのは自明の理。では観客を増やす最もプリミティブな方法は何かと言えば、まずは関係者、つまり仲間を増やす事である。当たり前の話ではあるが例えば出演者が一人から二人になれば関係者も宣伝力も2倍になる。

夜に静かは個人ユニットの上に、『終演挨拶』では作・演出・出演すべてを容原一人で担当した事により、作品内容以前制作面で大きな差がついてしまっていた様に思うのだ。去年のカンパネルラ名義での参戦時も同様の感想を持っていたので、このウィークポイントを克服しない限り30リーグでの勝利は厳しいのではないかと憂慮していたのだが・・・

第五節の夜に静かのオーダーを見ると、そのウィークポイントは解消されたと見ていいだろう。第五節の出演者は容原を含む四名。しかも容原を除く三名の所属クレジット『カムパネルラ』となっているからだ。初勝利を掴むのに十分な仲間を得た夜に静かのラストバトルに期待したい。


対する後攻の『AND FAMILIARS(以下FAMI)』は第三節にて『VR世界で繋がっている仮想家族(?)』という、お得意のホームコメディに一捻り加えた意欲作『欠乏×願望UNIVERSE』で勝負をかけるも惜敗。ルイバニのリーグ優勝の瞬間を目の当たりにするという屈辱を味わう結果となってしまった。

ただし、結果こそ出なかったもののユニット名をマイナーチェンジして2年ぶりに30リーグに参戦したFAMIの意気込みは十分伝わる作品であった。FAMIといえば『遊劇!浪漫派FAMILIAR』時代から一貫してお客さんを選ばないストレートホームコメディを作り続けており、『欠乏×願望UNIVERSE』もその良さは残しつつ、演出面では歌、ダンス、見立て大道具(テーブルをロケットに見立てる)等、今まで30リーグ30GPで上演された作品の中から特にウケの良かった要素をこれでもかと取り込んだ、まさに30リーグ勝つための作品であったと言って良いだろう。

そしてもう一つ、FAMIが今作で挑戦した事がある。それは『定番設定を使用しない選択』だ。FAMI作品のホームコメディ以外のもう一つの定番として、登場人物に『特定の人物にしか見えない幽霊』が必ずいるというものがある。今まではこの設定を巧みに利用して笑い感動を生み出していたのだが、『欠乏×願望UNIVERSE』ではその定番設定を使用しなかったのだ。

今回の敗因を求めるとするならば、この選択が勝敗を分ける一つの要因になった可能性があるかもしれない。団体名のマイナーチェンジに伴い、内容でも新たな一面をアピールするという作戦は、従来のファンにとって新鮮さは感じるものの、同時に定番を観られなかった物足りなさを感じさせてしまう恐れがあるからだ。実際『欠乏×願望UNIVERSE』は意欲的な設定であったがそれ故に物語が少し複雑になってしまい、FAMIの本来の持ち味である老若男女が楽しめる分かりやすやが犠牲になってしまっている印象を受けた。

しかしそこはさすが30×30常連組。第五節に向けてそのウィークポイントを確実に改善する策を打ち出してきた。火ゲキチラシに掲載されているあらすじを読むところ、どうやら第五節は『特定の人物にしか見えない幽霊が出てくるホームドラマ』という、FAMIの代名詞とも言える設定で勝負をかける模様なのだ。

今まで培って来たFAMI定番魅力と『欠乏×願望UNIVERSE』で新たに魅せた30リーグに勝つため戦術が噛み合えば、第一回30リーグで『0F-ゼロフレーム-』が成し遂げた『30リーグで敗退するも観客投票で30GPに選出されてそのまま優勝』という奇跡を起こせる様な作品が生まれる可能性は十分にある。はたして奇跡は起こせるのか?


最後にもう一度言っておこう。30リーグ初の消化試合となってしまった第五節だが侮るなかれ。こういう試合でこそ熱い名勝負が生まれる事は、スポーツ観戦好きであれば言わずもがなの筈だ。栄光を掴むための戦いはもちろん面白いが、崖っぷちに立たされた者同士の戦いも面白くない訳がない。真剣勝負だからこそ生まれた、お互いのプライドを賭けた熱い戦いをぜひ見逃さないで頂きたい。


上田ダイゴ(30リーグチェアマン)

※敬称略

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